潮騒
Nishikawa Takanori
胸を刺す痛みと 絞り出す涙で
今、僕を 洗い流して
さよならの代わりに
伏せた君の瞳が
最後の言葉を 探していた
俯く君の横顔に 情けないくらい
かじかんだ手を そっと押し当てて
伝えきれないコトノハが
遠い潮騒と 吹き抜ける風に
掻き消されてく
不意に見せる その笑顔に
身動き出来ないまま
やけに強く抱いたのは
別れを近くに感じていたから
胸を剌す痛みと 絞り出す涙で
今、僕を 洗い流して
さよならの代わりに
伏せた君の瞳が
最後の言葉を 探していた
どんなに声を嗄したって
どんなに腕を伸ばしてみたって
もう届かなくて
水面を漂う小舟みたいに
ふたつに割れた 命の破片が
沖へ沖へと
何もかもを 欲しがってた
過ぎ去った昨日さえも
あの日交わした約束 どれひとつ
まだ果たせずにいるけど
重なり合う度に 離れてゆく程に
萎んでく 僕の心は
開ききったまんまの 傷口を晒して
滴る赤い血を 拭えずにいた
微かに打ち震える 頼りない鼓動が
寄せては返す波の様で
胸を刺す痛みも 絞り出す涙も
また君を 思い出すけど
さよならの代わりに
くちづけを残して
見失(うしな)うばかりの 僕の瞳は
違う応えを 探していた