花女
拝啓 昔の私
それなりに味方もいて敵もいた
だけどなぜか嫌われてばっかな気がした
見下されたくない
見た目や上部が全てでそれ以外全部いらない
その考えは間違いじゃない
安心してほしい
君だって最初は敵だった
愛想笑いばっか浮かべて
私のこと本当は苦手なんだと
日々を紡いでも疑った
ある日駅前で花を買った
あげたのはなんとなく君に似合うかと思って
君は花をドライ加工して笑いながら本棚に置く
「そんなもの価値なんてないでしょ?」
すると君は言った
「僕を大好きと知った
それだけでいいさ
確信なんてないのだけれど
間違ってるなら教えてくれよ
まあいいやとりあえず
大好きだ」
私は強がり何も言わずにため息をつく
それでも何かあるたびに花をあげた
適当に選んだものだ
あげる度にドライ加工をしてそこら中に飾るから
君の家は花いっぱいで溢れかえって散らかっていた
「じゃあ私の部屋に置こうか」
(え? なに言ってるの? )
(今まで敵だったんだよね? ねえ)
(彼を好きにでもなった?)
「ああそうだよ私は好きなんだ彼のことが」
(ねえ 忘れたの?)
(本当は全部わかってるんだよね?)
(人は人を見下すものよ)
彼は違う
(違うって何?)
(簡単に信じれるなら勝手にしなよ)
(ねえ花女)
変化する心 それが吐けなくて
君のそばではにかむばかり
間違ってるとは思わないフリ
恋の意味を知らず鮮やかに
確信が持てないまま
すれ違う日々も増えた
あの日初めてあげた花びらも
年季が入って色落ちた
ああそうか永遠なんてないんだ
どんなにどんなに加工しようが花は枯れるし
私たちもシワを作っていつか土に帰る
紡いだ日々も培った笑顔も何もかもがいつかは消える
嗄れて枯れ落ちて全て消えるなら私はどうする?
そう思ってから早かった 痛みも知恵も増えた
もう時間なんて必要ない
嗚呼
ごめんねお別れだ
人生は一度きりだ
互いの吐息が手を繋ぐ
きっかけはいつも花だ
さよなら さよなら
今までの私
大好きを言える
それだけでいいの
これから何度傷つけあって
間違ってるなら教えてほしい
この花に誓う
大好きよ
(拝啓 未来の私)
(本当普通の大人になったね)
(本当普通の大人になっちゃったんだね?)
(くだらない くだらない )
(過去の痛みは全部消えない)
(敵だって消えるわけじゃない)
(わだかまりを抱えて生きて)
(そして美しく散っていけばいい)
(揺れて溢れ落ちた花のように )
しきたりなんかはいらない
世間体も忘れ去った
花束を持って君の元へ
それだけでいいんだ