ノーサイド
Yumi Matsutoya
彼は目を閉じて 枯れた芝生の匂い
深く吸った
長いリーグ戦 しめくくるキックは
ゴールをそれた
肩を落として 土をはらった
ゆるやかな 冬の日の黄昏に
彼はもう二度と かぐことのない風
深く吸った
何をゴールに決めて
何を犠牲にしたの 誰も知らず
歓声よりも長く 興奮よりも速く
走ろうとしていた あなたを
少しでもわかりたいから
人々がみんな
立ち去っても 私ここにいるわ
同じゼッケン 誰かがつけて
また次のシーズンを かけてゆく
人々がみんな
あなたを忘れても ここにいるわ
何をゴールに決めて
何を犠牲にしたの 誰も知らず
歓声よりも長く 興奮よりも速く
走ろうとしていた あなたを
少しでもわかりたいから
人々がみんな
立ち去っても私 ここにいるわ