紫のライン
隆 松本
雨に眠るカフェに君がいる
ガラス越しに奴とじゃれている
壊れかけたワイパーに
赤い街が滲んでる
あれはただ他人の空似だと
俺は自分の瞳をこすったよ
信号待ちしてる間の
青く凍る一瞬さ
紫のラインが心にひかれる
ナイフの切っ尖が滑ったように
これは永遠だと信じた愛が
不意にその線から
ふたつに切り裂かれる
海の倉庫街に車とめ
何が悪かったか考えた
別に誰のせいじゃない
紅い雨が燃えている
たぶん無言のまま去るほうが
奴を殴るよりも粋だよね
男らしさなんてのは
蒼い雲に隠してね
紫のラインは誰にも消せない
時の糸と針も縫えない傷さ
密入国すると胸を撃たれる
見えない国境が男と女にある