遠くへ - 1973年・春・20才
やっと試験に受かったと
喜び勇んで歩く並木道
肩にセーターと
おろしたてのバスケット・シューズ
長髪をひるがえし駆け上がる校舎
初めてあの娘に出会った朝は
僕は20才で まだキャンパスも春
赤いヘルメットの奥の瞳に
見透されたようで 何とか照れ笑い
遠くへ 遠くへと願った日々
真直ぐに見ておくれ
僕は泣いてる 君のために
ポケットの中 僅かなバイト料
最終電車を待つ
プラット・ホームから
あの娘に電話
「やあ僕さ 元気かい」
「今から出て来ないか
どこかで飲もうぜ」
駅前通りの馴染みの店で
グラスを重ねて そして初めての夜
その日 あの娘の恋が終ったとは
知らない僕もひとり寂しかったし
遠くへ 遠くへと願った日々
真直ぐに見ておくれ
僕は泣いてる 君のために
紺と銀色の楯の前で
空を仰いで祈り続けた
"神よ 僕等に力をかして
でなけりゃ今にも
倒れてしまいそう"
振り向くと 遠くにあの娘の眼差し
笑っているのか泣き出しそうなのか
違う 違う こんな風に僕は
打ちのめされる為に
生きてきた訳じゃない
遠くへ 遠くへと願った日々
真直ぐに見ておくれ
僕は泣いてる 君のために
"星がひとつ空から降りて来て
あなたの道を照らすのよ"と
話してくれた きっとそうだね
いつまでたっても石ころじゃないさ
遠くへ 遠くへと願った日々
真直ぐに見ておくれ
僕は泣いてる 君のために